「光」と「風」がリフォームの基本を作る

“リフォームは住まい手の自由になる”と言われても、何をどのようにすれば自由になれるのか?
とハタと困ってしまう人は多いのではないか。

普段からあまり自分の服装に関心を持っていない人が、間違ってオーダーメードの服装店に飛び込んでしまったようなもので、何を主張すればよいのか、あるいは一体何を最初に決めればよいのか、決定の優先順位がイメージできずにパニック状態に陥ってしまうようなものである。
しかし心配はない、まずは、勇気を奮ってリフォーム会社を訪れてみることだ。

設計に力を入れている会社であれば、スタッフが実にうまく会話をリードしてくれるはずである。

住宅の設計には決まったやり方というものは無くて、設計者はその人なりのやり方で、話をリードしてくれるわけだが、話し始めてみるといつの間にか、自分が自分の家で何を大切にすべきと考えていたのかがおぼろげながら見えてくる。
こういう会話ができたら素晴らしい。

私自身が設計者としてどのような会話をするかというと、まずは「光」と「風」の通り道の話である。

リフォームの場合は、玄関や窓などの開口部の位置・形状は動かすことができないし、住戸の平面図の外形線も設計者が手を付けることができない範囲にある。
リフォームの設計はこのような強い制約条件の上に成り立っているので、これを窮屈だと感じる設計者も居るかもしれないが、実はこの条件のもとで「よい住宅」を作り上げる道はとても狭い可能性しか開かれていなく、この可能性を確実に探り当てる方法が「光」と「風」の通り道を探ることなのである。

多くのマンションでは開口部(窓)の場所は狭い範囲に限られている一方、住戸の形状は開口部と直行方向に細長いため、住戸の中央部分に「光」が届きにくい形状をしていることが多い。

この「光」を遮る壁をなるべく作らないようにすることが設計の基本である。

またこの中央部分は薄暗いだけでなく空気が淀んでジメジメしがちである。

そこで「風」が次に重要になる。

「風」は開口部から開口部へと抜けるので、バルコニー側の開口部から廊下側の開口部へと「風」が抜けるようにすること、このことが基本になる。

 

この時「玄関は締め切ったままでも—風が抜ける」という条件を忘れないように。
勿論、角住戸の場合や、住戸間口が奥行に比べて広い住戸などでは、どのような設計をしても光と風はふんだんに入り込むので、以上の心配はない。

「光」と「風」の流れを妨げるものは何だろう?それは具体的には「壁」で、「壁」は「水回り」や「部屋」の配置によって作られる。

先ず「水回り」の話をしよう。バスルームもトイレも昔は「光」と「風」が入り込む場所だったが、今では密室としてしか設計できないケースが多い。
そこで照明と換気扇が必須になるわけであるが、時と場合によっては、建具を開け放って空気の入れ替えができる設計が望ましい。
洗濯室・洗面所はどうだろうか?水回りとして一括して密室にしてしまう設計が多いのは残念である。
風が抜け、光あふれる場所でありたい。キッチンはどうだろうか。換気扇を回していなければ空気が淀んでしまう場所や、直射日光は避けたいが昼間でも照明を付けなければならない場所に持ってくるのは考えものである。

次に「部屋」についてだが、これは住宅の他の部分とは区切られている寝室や子供室、趣味室、臨時の客室などを指して「部屋」と呼んでいるが、ここに「光」や「風」を通り抜けさせたいという要求ここを住宅の他の部分とは区切りたいという要求とは相矛盾することになる。

この矛盾を解決するために建具が活躍することになる。区切りたいときにはシッカリ区切るが、「光」や「風」を通したい時は、建具の存在すら隠したい、というような要求が生まれてくる。

設計は1990年代から環境の時代に入ったと言われている。
自然の気持ちの良い「光」、気持ちの良い「風」をできるだけ利用して住まいを作り上げる技術が設計の主流になってきている。
このことは、地球環境に優しくという、全世界の人々と共有すべき考え方から生まれている。

以上垣間みていただいた私流の設計会話術は、あなたの心の中にあるもっとも大切なはずのこと、の基本の上にリフォームの自由を打ち立てようという考え方から出発している。

「光」と「風」にこだわるあなたは、
もうすでに個性溢れるリフォームの自由を考え始めているはずである。

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