リフォーム性能の見極め方(その1)—-構造の安心

リフォームにしようか、新築にしようか迷っている人は多い。新築マンションは価格的に手が届かなくて、リフォーム物件を本気で考え始めました、という声は良く聞く。

新築並みの性能をうたっているリフォーム物件は多い。しかし本当に性能が新築同等ならば何故、価格が安いのだろうか? 中古だから安いという説明ではなく、新築に比べて何が劣っているから安いのかその理由をはっきり知りたいと思うのは当然である。

 

新築マンションに関しては、2000年に住宅性能表示制度なるものができて、第三者機関の専門家が行った性能判定の結果が売買に活用されるようになってきている。構造安全性、火災時安全性、劣化軽減対策、設備の維持管理容易性、温熱環境、高齢化対策等の等級が解りやすく示されるようになった。

中古住宅にも同様の性能表示が必要だという声を受けて中古住宅性能表示制度も作られたが、これはほとんど活用されないのが現状だ。何故かというと新築の場合は図面も構造計算書もそろっていて、工事中にその様子も見ることができるので、専門家は信頼に足る判定を下すことができる。しかし中古住宅の場合は図面も構造計算書も見当たらない例が殆どで、しかも人が住んでいる状態では短時間のしかも目視による調査に頼らざるを得ない。その診断結果の信頼度には自ずと限界がある。

 

私は住いの性能を考える時に「安心」「便利」「快適」の3本柱を掲げるようにしている。建物の強さの指標はこのうちの「安心」である。指標と呼ぶにはあまりにも主観が強すぎると思われる方も多いと思う。住まいの性能は人間の感覚器官を尺度としているので個人差が大きい。ある人にとっての「安心」は必ずしも他の人にとっての「安心」ではない。その「安心度」のばらつきを統計的に処理して初めて客観的な指標を作り出すことができる。しかし、客観的な数値を使って「安心」を証明しようと思ってもその人が「不安だ」と思ってしまえば、どのような証明も一気に崩れてしまう。千年に一度の確率で起きる災害にも不安を表明する人も居るし、30年に一度の災害で壊れてしまうような家に住んでいても平気な人はいる。

 

日本では大きな地震が起きるたびに構造基準が改定されてきていて、中古住宅のほとんどは古い構造基準で建てられている。今回の東日本大震災においても、地盤液状化の問題、長周期振動の問題、耐津波性能(耐浪性)の問題などが提起されていて、近い将来、現行の構造基準も古いものになってしまう可能性がある。

 

構造の専門家は構造の安全性は築年数に依っているという。1981年の所に線を引いて、それ以前に建設されたマンションは旧基準(旧耐震基準)、それ以降に建てられたマンションは新基準(新耐震基準)と分類して、新基準のものは構造安全性が高いと断定している。さらに1971年という所に次の線が引かれる。つまり1971年から1981年までの期間に出来たマンションはグレイであると言われている。1981年に完成を見た新耐震基準は1971年から積み上げられてきた数々の構造基準の改正の到達点と見做されているので、旧耐震よりは強く新耐震よりは弱い構造安全性のボーダーライン上にあると言うのだ。今まさにリフォーム市場で盛んに取引されているマンション黎明期の物件にこのボーダーライン上のものが多い。この時代のマンションはいろいろな意味で良くできているものが多く、最近の新築マンションには無い風格がある。しかし構造安全性がグレイなのは否定しがたい事実なので、何とか耐震診断を実施して、正しい危険度の判定を受けることを勧めたい。

 

耐震診断も耐震補強も1住戸単位ではできない。マンション全体の住民の合意が無ければ実施できない。悲しいかなここに1住戸ごとのリフォーム工事の限界がある。マンション住民全員の意見を取りまとめて、耐震診断(危険度の判定)を実施するには、ずいぶん時間が掛かるかもしれない。しかしこのような投資をして手に入れた「安心」には大きな価値がある。