リフォーム性能の見極め方(その2)—-設備の安心

 リフォームの問題の中で深刻なものは、目に見えない、気が付きにくい所で「設備の安心」が脅かされているということである。特に気が気ではないのが給排水管である。マンションの黎明期、1960年代に作られたものでは、水道水が赤く濁る「赤水」(酸化鉄を含んだ水)が発生して大騒ぎになり、マンション中の給水管の全てを取り替えるという事件を経験している所が少なくない。「赤水」が社会問題化した1975年頃以降の新築物件からは、水道管をそれまで主流であった亜鉛メッキ鋼管(白ガス管)を止め、塩ビライニング鋼管に変更するようになった。それでも配管の継手部分から錆びが出る状態は続き、コア付継手の開発によって、ようやくその問題が克服された。1985年頃のことである。

排水に関していうと、トイレの汚水管は管径も太く水量も多いので管内に付着物が付きにくく排水障害は起きにくい。(汚水のトラブルの多くは便器が原因である。)排水の中でトラブルの原因になりやすいのは雑排水管であり、台所系統は特に詰まりやすい。2年に1度、できれば毎年、定期的に管内を清掃する必要があるが、これを実施していないような管理状態の悪いマンションは買わないのが鉄則である。

良い管理をしていても、配管材料が経年で劣化して漏水が発生するということがあり、最近よく聞く雑排水管のトラブルはこれである。築30年を経過した雑排水管は何時漏水事故が起きてもおかしくない状態にある。

原因となっている配管材料は排水用炭素鋼鋼管(いわゆる白ガス管とよばれるもので、水道用亜鉛メッキ鋼管と同じ組成)である。ドレネージ継手といってネジを切って継いでいく方式をとっているためネジの部分の肉厚が薄く、錆びて水漏れを起こしやすい。(汚水管には鋳鉄管等の肉厚の厚いものが使われており、こうしたトラブルは少ない。)

排水の配管材料の中で丈夫で耐久性が高く漏水事故も少ないのは排水用硬質塩化ビニル管(いわゆるVP)である。この配管材料はマンションの黎明期には既に一般住宅用に出回っていたにもかかわらず、何故マンションにこれが使われずに、錆びやすい白ガス管が使われたのだろう。その理由はVPが燃えやすく鉄筋コンクリートの壁やスラブを貫通する部分に使用することが危険とされたからである。錆びを承知でやむにやまれず防耐火に強い白ガス管を使ってしまった、だから経年で水漏れが発生してしまったという、なんともやりきれない事情があったのだ。

1980年頃にゴムパッキングを用いたMD継手という差し込み型の継手が開発され、ネジきりが無くなりこの問題は解決した。しかし、排水の詰まりを防止するための洗浄作業で機械的に配管の内部を傷つけ、防食用の被膜を破りそこから錆びが発生するという現象は今なお進行中である。

MD継手と丁度同じ1980年頃に、硬質塩化ビニル管の周囲を耐火材で巻き、火に燃えやすい塩ビパイプを使いながら防耐火の条件をクリアできるという画期的な商品が開発された。この商品つまり耐火二層管によって、ようやく錆の原因である鋼管を使わない排水システムが完成したわけである。

以上くどくどと、給排水の様々な種類の管材・継手の名前を上げて、その開発の歴史を述べてきたのは、あなたのマンションの給排水設備がどのような管材・継手でできているのかを知ることが「設備の安心」を得るために、とても大事なことだからである。

あなたのマンションが1985年以降に出来ているので安心だと早合点をしないで欲しい。今まで述べてきた1975年頃、1980年頃、1985年頃というのは新商品開発の時期を言っているのであって、それ以降も旧商品規格が市場にまだ多く残って使われていたことを忘れないで欲しい。

中古マンションを買う時には、築年数だけでなく必ずその住戸の給排水の配管と継手の材料名の確認を忘れずに実行してほしい。材料名が解れば、漏水事故の発生確率がある程度は予測できる。事故の確率が高いと診断されたならば、リフォームを機会に、住戸内の給排水管を全て取り換えすることをお勧めしたい。

排水のトラブルは専有部分にのみ発生するわけではない。深刻なトラブルが共用部とされる共用配管にも発生の可能性がある。自分の住戸だけ新品になればそれで済むということではなく、実は、マンションの住民が全員で取り組まなければならない大きな課題がここにある。

排水立管というのは実は共用部分であって、自分の住戸の中にあるものでも勝手にいじってはいけない。自分の住戸の中にある共用立管を新品にしようというようなことは単独ではできない。マンション全体の合意のもとで工事を進めなければいけない。つまりマンションの管理体制がしっかりしているかどうかがポイントになるのである。

しっかりしたマンションでは長期修繕計画というものを立案していて、外壁の塗り替えや防水のやり替えなどを、実施してきている。共用部分の「設備の安心」はしっかりした長期修繕計画に掛かっていて、共用配管の点検整備はここで取り組まれていくべきものである。長期修繕計画の予定や実施の履歴を知ることも「設備の安心」を得るための重要ポイントである。