リフォーム性能の見極め方(その5)—-換気

 換気能力が不足している空間に長く居ると不快になる。この不快さの原因は空気質の低下であり、その代表的な指標が炭酸ガスである。炭酸ガスそのものが不快なわけでなく、呼気に含まれている炭酸ガスが沢山たまるような状態では、口臭体臭その他、人が放つ臭気が滞留し相乗的に作用して不快となる。(ただしタバコは論外で、たばこの不快さは換気では解消できない。)

ビルでは空調が空気質の改善を含めた換気性能を担っているのだが、住宅では冷暖房はあっても換気まで含めた空調を備えている例は稀である。従って、住宅の空気質を維持する機能は窓が担うことになっている。室内の空気を快適な状態に維持するには、随時窓開けを励行するのが第1である。しかし夏は暑く、冬は寒いのでいちいち窓などは開けてられない、従ってロスナイなどの全熱交換型の機械で換気するのが最も快適な換気とされている。

余裕があればロスナイはぜひ入れたい設備ではあるが住宅でここまでの高水準の設備を入れることはまだ標準にはなっていない。

一般的に住宅では空気が悪くなってきたら、手近な換気扇のスイッチを入れるというようなやり方がとられている。しかし住宅のすべての居室には換気扇は無いし、建材の揮発性物質排出の為に義務付けられている24時間換気扇では容量が小さすぎて、空気質を良好に保つところまでの風量は無い。ドアを開け、台所のレンジフードを回して何とか空気の悪化を防ぐという便法が取られている。換気をすれば空気質はよくなるが、室内の温度条件が悪化していくので、十分な換気効果が得られないままスイッチが切られてしまう。

このように住宅の換気は、いい加減なものなので、本当はこれを何とか改善しなければいけないのだが、コストがかかるので断念されてしまう現実がある。空気清浄機というのは便法であって、汚染物質は除去できるが炭酸ガスを減らすことも酸素を増やすこともできないので、ロスナイには到底叶わない。

マンションで換気の問題と言えば、以上のような空気質の議論ではなく、レンジフードの吸いこみが悪い、トイレの匂いがなかなか抜けない、風呂の湿気がなかなかとれない、など換気扇の性能が思ったほど出ないという初歩的かつ切実なクレームに集中している。リフォームして換気扇を取り替えれば改善されるかというと、これが一筋縄ではいかなく、なかなかその対応策は単純ではない。

換気性能は換気扇の能力、ダクトの径、長さ、曲りの数、排気口の口径などに依存しているが、より根本的には建物の給気能力に支配されている。換気扇のスイッチを入れると負圧でドアが開かなくなったりするが、これは明らかな給気不足である。サッシの性能が良くなった結果、建物の気密性能が上がり、独立した給気口の確保が必要になってきているが、古いマンションでは十分には確保できていない例が多い。

既存のマンションに給気口を新たに造るのは中々厄介である。コンクリートの躯体に孔をあけるには専門家の診断が必要であるが、間違って梁などに孔を空けられてしまったら取り返しがつかないので孔あけを一切禁止している管理組合も多い。しかしそれでは換気性能の改善はできないので、専門家の診断に基づいて信頼できる業者があける孔については許可する方向で規約改正していって欲しいと思う。

古いマンションでは換気の排気口すら確保されていない所もある。台所のレンジフードは付いているが、トイレや風呂では窓に換気を頼るのが当たり前であった。だからトイレや風呂に窓を空けられるような間取りとしたわけで、このような家は風通しも良く、昼間でも明るく省エネ上もなかなか好都合な家だったように思う。しかし室内で直火の燃焼器具を焚いて暖を取っていた時代なので、サッシには換気小窓が付いて居た。つまり換気上の良い面、悪い面が共存していた。

しかし時代とともにマンションの間取りに効率が求められるようになって、狭い間口で奥行の長い間取りが一般化して行くと、水回りは窓のない中央部に押し込められてしまう。排気用のダクトスペースを建物の中央にコンクリートブロックで作り、その中に各戸が排気筒を突き出して排気をするやり方が始まった。最終的にはこのやり方は不完全だということになって、今日の換気扇+横引きダクト+ベントキャップ(排気口)で空気を外に出すという技術へと収斂していったのである。

今日一般化されているこの換気扇方式は、空気が外に出るところで梁に横孔(スリーブ)を空けなければならないという問題がある。新築時には梁の最も良い所に孔を空けて造るわけだが、リフォームする時には問題が起きる。もともと孔のあいている所を利用するということで済めば問題は無いが、選んだ場所にスリーブが無い、又は孔が小さいということが良く起こる。梁に新たな孔を空けたり、既存の孔を大きくするということは厳禁なので、梁を避けて梁の下の躯体に新たに孔を抜くということになる。最初に述べたように、コンクリートの躯体に孔を空けるには専門家の診断と管理組合の許可が必要である。梁の下がサッシの場合はその一部を変更して排気口とするわけだが、その場合も管理組合の許可が必要である。そのダクト部分は高さが極端に低くなるので意匠上も大いに工夫しなければならない。換気にはリフォーム性能上残された課題がまだまだ沢山ある。