リフォーム性能の見極め方(その6)—-冷暖房(その1)

 1ヶ月前に換気の話を書き上げた後、すぐに花粉の季節になった。もう10年にもなるが冬の峠を超え、空気の色も明るく変わって見え始めた矢先にこの花粉の洗礼を受けることになる。激しいくしゃみと鼻水は薬を飲めばなんとか納まるが、今度は頭が重く、どんよりとした気分になり眠気との戦いになる。仕事の能率は落ち、危ないので車にも乗れずただひたすら耐え忍ぶ毎日となる。

住宅の換気をやはり根本からやり直さなければ駄目だという気持ちがとても強くなった。前回も書いたように、住宅の換気は極めていい加減で、とても性能を語ることなどできないレベルなのだが、現状を打開することなどは殆ど不可能だろうと諦めていたのである。

1年の内の3ヶ月をまるまる苦しんでいる同志たちは恐らく人口の数十パーセントは居るだろうから、換気設備を完備して、せめて家の中だけでも花粉を忘れて生活することが出来たならどんなに喜ぶことだろう。住宅のクリーンルーム化である。このニーズは確実にある。

解決方法は実に単純で、前回述べた通り、全熱交換型の換気扇ロスナイを付け、外気取り入れ口に高性能フィルターを設置する、これだけである。こんなことが出来るのは少数のお金持ちだけだと思い込んでいたが、これだけの同志がいれば立派な市場が形成されているも同然なので、取り付ける人が増えれば安くなること間違いない。リフォームの場合、空気の出入り口は限られているので、サッシの一部を塞いで空気の出入り口を確保しなければならない。室内に銀色のダクトが見苦しく這い回わることになるが、花粉の季節に性能の「見える化」はむしろ愉快である。大いに同志を募ろうと思う。

今回はリフォームの冷暖房について書いてみる。

引っ越しの時、あらゆる設備機器は元の家に置いていくのに、何故エアコンだけは持って移動するのだろうか?こんな疑問を持ったことは無いだろうか。

答えは、マンションにはエアコンが備え付けられていないから、であるが、それでは何故、マンションにはエアコンが備え付けられていないのだろう?

昔、公団住宅には換気扇がついていなく、木枠だけが在って、居住者は住んでから換気扇を買って付けた。今でも公営住宅に風呂釜浴槽がついて居ない所があって、自分で工事を手配しなければならない。安い賃料だから、古い造りだからしようがないという諦めも付くが、エアコンはちょっと事情が違うらしい。

エアコンが実装されているのは圧倒的に賃貸マンションであって、分譲マンションにはよほどの高級マンションでない限り付いて居ない。これって逆じゃないか?

ある人が説明してくれたのは、これは分譲マンションの熾烈な価格競争のなせる業で、最初にエアコンを外して売り出した習慣が業界全体に沁みついて、抜け出せなくなったらしいということである。なんとも悲しい理由である。

最初に付けても、後から付けても同じじゃないか、何をつまらないことに拘っているのか、と疑問に思う方も居るかもしれないので、私の拘りを言うと、ひとえに冷媒配管が住宅デザインを台無しにするからである。

室内であれ、外壁であれ、冷媒管の配管カバーが這い回っているマンションは実に多い。これではインテリアにどんなにお金を掛けても、外壁にタイルを貼っても一挙にレベルダウンである。マンションを設計した人が悪いのではなく、エアコンは居住者が住んでから付けるものと決めてかかっている新築分譲マンション業界が悪いのである。

冷媒配管を工事中に内装壁内や浮き床下に埋めておけば、室内外に見苦しい配管は一切出ないで済ませられる。そんなに、難しい技術ではない。少なくとも私が設計したリフォームでは必ずそうしている。

冷媒配管と一口に言っても、冷媒管とドレイン管と電力線と信号線から成り立っている結構複雑な配管の束である。エアコンの機種を変える度に配管の種類も変えなければいけないかと心配する向きもあるかもしれないが、そんなことは無い。ほとんどの機器が統一配管でいけている。

最近、換気機能付きエアコンなるものが発売されたが、これは換気の管が一本余計に加わっているために、既存の埋め込み配管への接続はNGらしい。これが出現した時、私は相当にあせった。埋め込み配管を使ってくれている大勢の私の施主の顔が浮かんだ。もしかしたら大変な間違いをしでかしてしまったかもしれない。

しかしこれは杞憂だった。冷静になって考え直してみたら、住宅が必要とする換気が、こんな細い管で間に合うはずが無い。ロスナイのダクト設計をしたことのある人ならば、ロスナイが必要とするダクトの太さが、この怪しげなエアコンについている換気の管の何十倍もしていることに気が付くだろう。(誌面が尽きたのでこの続きはまた来月に。)