リフォーム性能の見極め方(その7)—-冷暖房(その2)

 新築のマンションで、エアコンは、引っ越しと同時に居住者が手配するものと思われている。家電の量販店の人が迷わず取り付けられるように、ほとんどの場合壁掛け式のごく標準的な機器が想定されている。

一方リフォームでは、エアコンまでを工事業者の人が手配・取り付けまでやるので、実にきめ細かく機器の選定をすることができる。もっとも、リフォーム後に売りに出される物件では新築と同じく、売り出し時にはエアコンは付けないこともある。

「エアコンって、壁掛け式以外のものもあるのですか?」と聞かれるぐらい、専門家以外の人にはエアコンと言えば壁掛け式のイメージが摺り込まれていて、そのほかのタイプのエアコンは即座には思い浮かばないようである。

エアコンには壁掛け式以外に床置き式、壁埋め込み式、天井埋め込み式、そしてダクト方式など様々なタイプがある。設計者は、これらの様々なタイプの中から部屋の用途、大きさ、デザインに合わせて、不都合が起きない様に注意深く選定する。戸建注文住宅の設計者はこの選択に随分力を注ぐが、マンションでもリフォームの世界はこれができる。

エアコンに関する不都合と言えば、容量の選定やマルチの設定に誤りがあって効きが悪いとか、日射が直接部屋に入り込んで冷房が効かないとか、冷房は効くが暖房は効かないとか、特定の場所に風が当たって不快であるとか、様々なものがある。

こうした不都合を未然に回避するために、設計者は室内に最適な気流状態を作り出すことを目指して様々に工夫する。つまり空気の流れをデザインするのである。

あったまった空気は上に上がり、冷された空気は下に下がる。天井付近に吹き出し口がある場合、冬にはある程度のスピードで吹き出さないと、床まで空気が届く前に再び上昇してしまう。夏に同じことをやると、吹き出し口の直下の人は寒くて叶わない。夏には下向きのスピードよりも、水平に広い面積に拡散する方向に吹いて、あとは自然落下する方法を取る。

床の足元付近に吹き出しがあった場合は、冬には水平になるべく広い面積に拡散する方向に吹いて、あとはあったかい空気が自然上昇をする方法を取る。夏には上向きに吹いて、あとは冷たい空気が自然に落下して広い面積を冷やす方法をとる。

このように、冬と夏とでは快適な気流の在り方が逆転していることがお分かりだろう。そして、吹き出し口の位置が天井付近の場合と吹き出し口が床付近の場合とでは、冬と夏の快適な気流のあり方がさらに逆転していることも興味深く思われただろう。

このように気流をコントロールすることは中々一筋縄ではいかない難しい技術であって、そのために、設備設計という専門分野がある。

設備設計者に聞くと、最も理想的なのは、夏は天井面全体から空気を吹いて、床一面で吸い込む。冬は逆に床一面から吹いて、天井一面から吸い込む、この形がベストであるという。こうすれば気流の流れが一様になって、しかも体感の風速はごくわずかなので、すこぶる快適であるという。

ここまでの快適さは住宅ではまだ夢物語だが、吹き出し口と吸い込み口を分けるダクト方式を選択し、それに床暖房をプラスしたものは、住宅にも十分適用可能な方式である。

夏は天井に分散的に配置した吹き出し口から、ゆっくりした速度で空気を落とし、床付近に付けた吸い込み口から空気を回収して天井裏の機械に戻す。冬も天井のたくさんの吹き出し口からゆっくり空気を落として、床付近の吸い込み口から空気を回収して天井裏の機械にもどす訳だが、床付近は一様には空気が回らない。そこで床暖房を使って床付近の温度を一様にするという訳である。

天井裏に機械を据えるダクト方式は、階高の低い住宅では難しいと考える設計者も多く居るが、天井高さをあまり必要としない場所、例えば浴室や便所、廊下、納戸などの天井裏に機械を据えれば、意外と上手く行くのである。是非挑戦してみてほしい。快適さがぐんと違うはずである。

ダクト方式は予算的に難しいということもあり得るので、次の選択肢は天井埋め込み型となる。それでも予算オーバーということになると、壁掛け方式や壁埋め込み式になる。

その場合、小容量のものを分散的に配置することをお勧めしたい。小容量のものは静圧が小さいので、床暖房との併用が必須条件である。小容量分散設置は必要なところだけを暖冷房する省エネの考え方に則っている。

小容量のものを分散的に設置するよりも大容量のものを1か所集中的に設置する方が経済的だとアドバイスする人が現れたら、新築マンションと同じことをする以外に方法は無い。暖冷房の快適さからはどんどん遠のくことになるのだが。