リフォーム性能の見極め方(その8)—-給湯方式

 リフォームの設計で意外と手こずるのは、給湯方式の決定である。マンションが出来た年代によって、給湯方式は目まぐるしく変化している。

今でこそ、給湯はセントラルで行うのが当たり前であるが、最初は、浴槽に付いて居るガス風呂釜が唯一の湯沸かし器で、給湯機能は持っていなかった。次いで台所に瞬間ガス湯沸かし器が設置されるようになって、お湯が蛇口から出る快適さに人々は魅了されるようになる。

ガスでお湯を沸かすので、排ガスが出る。これを屋外に出すために排気機能が必要である。そのため、風呂には排気筒、台所には換気扇が必要で、風呂も台所もそれぞれ外気に面した場所あることが必須条件であった。

風呂釜にバランス釜が登場したのは70年代で、やがてここにシャワーが付き給湯機能が付くようになってセントラル給湯という考え方がマンションの標準解になって行く。洗面所にも台所も給湯が入っていったのである。そしてやがて洗濯機置き場にも給湯が当たり前になっていった。

バランス釜を採用する限り、風呂を外面化しなければならないが、給湯機のみを外面化できる場所に置いて、風呂は住戸の中央付近に置き、そこへは給湯を落とし込みで行うという考え方やがて切り替わっていった。

しかし問題なのは、日本人の入浴習慣の在り方である。西洋人のように一人一人が貯めたお湯を使い切って、次の人は新たにお湯を張る、ということはせずに、一度使われたお湯を沸かし直して次の人が使う「追い炊き」という日本独自の機能は必須条件であった。

給湯器から遠くに離れている風呂を追い炊きする技術は中々の難問だったが、ペアチューブという技術の開発によってそれが可能になった。浴槽に放熱パネルを付けて、そこまでペアチューブを使ってお湯を送り戻す技術が開発されたのである。この技術の発展形が床暖房であり、やがて床置き式の暖房器を各部屋に置くという方向へ発展していった。ヒートポンプ式のエアコンが普及するまでは、公営住宅でも暖房までセントラルでやっていた時代があった。

給湯機の技術も向上して、当初は室内に設置してバランス方式で換気していたセントラル給湯機がバルコニーやパイプスペースに設置できるようになり、給湯容量は13号、16号、24号へと拡大するが給湯機本体は逆にコンパクト化が進む、というように給湯器の技術は画期的な進歩を遂げるのである。80年代の終わりにはマンションはほぼ一律にこの水準にまで到達した。

ガスコンロに比べ電気ポットでお湯を沸かすのは不経済だというのは常識だったので、給湯の世界に電気が入り込む余地は無いと見られていたが、政策的に夜間の電力料金を引き下げる深夜電力制度が生またことから、深夜電力を使った給湯システムが生まれることになった。マンションの爆発的な普及が始まる70年代にはこのシステムは確立していて、給湯をガスでするか電気でするかは一応議論の対象になった。

しかし問題は、夜間にお湯を作るために、そのお湯を貯めておく貯湯槽が必要で、そのスペースの問題がどうしてもネックとなって、追い炊き機能も付けたりして電気も頑張ったが今一つの伸びはなかった。

しかし2000年代に入って、エコキュートというCO2を冷媒に使ったヒートポンプ技術による給湯システムが発明され、これが高い省エネ性を示したことにより、爆発的なヒット商品となった。深夜電力を使うので貯湯タンクは必須であるが、スペース的なデメリットを押さえて余りある省エネ性が評価されたのである。

ガス会社も負けてはならじと、ガスの燃焼排気ガスからもう一度熱を取り出す潜熱回収型のエコジョーズという新機種を開発し、エコキュートにぶつけてきた。

3.11の前時点までは、電力会社とガス会社は給湯の主導権をどちらが握るかの熾烈な戦いをしてきたため、相当量のエコキュートとエコジョーズが市場にばらまかれたことになる。リフォーム市場も例外ではなくこの商戦に巻き込まれた。

そして現在、燃料電池という新たな給湯暖房装置が集合住宅市場への出番を伺っている。ガスを使って給湯暖房と同時に電気も作るということから、上手く行けばガス会社の一人勝ちとなる。 しかしまだまだ値段が高い、冷房は出来ないので電気式のヒートポンプには叶わない、ガスを使っているので再生可能エネルギーではない、などマイナス点もある。

そこで最初に戻るが、給湯方式の選択は大いに迷う難題なのである。暖冷房はヒートポンプ式のエアコンに叶うものは無くこれこそ電気しかない。既存が個別給湯式であれば、間違いなくセントラル型へとリフォームすべきである。しかし、給湯をガスでやるべきなのか電気に切り替えるべきなのか?これは本当に悩ましいのである。燃料電池が普及すれば自動的にガスが勝つことになるが、それまでは、まだまだ電気も良い戦いをしていくように思う。