時間を織り込んだ間取り———-少子高齢化を考える

新築マンションのプランニングは未だに、3LDK標準の世界に留まっている。何ということだろう。
親子4人の標準世帯と言われた時代から、約半世紀が経過して世帯のイメージはすっかり変わってしまっている。今や世帯人数は2人世帯が最も多く、1人世帯、3人世帯の順で減っていて、4人世帯は第4位で、しかもその割合は20%を切っている。もはや標準世帯ではない。

もしも居住者ニーズ通りにプランニングすれば、1LDKを標準において、それは1人世帯、2人世帯に対応したプランとなる。3人に増える可能性が生じた時に+αの1室を付け足すという構成にすれば、全世帯の75%をカバーすることができる。

若い夫婦であれば、4人になる可能性もある。(確かに、全女性を対象にした統計値ではなく既婚女性の生涯出生率をみると2を超えている。)やはり3LDKは欲しいと即断するのではなく、もう一度、生涯時間を考えて計画を立ててほしい。

予定通り子供が2人生まれたとして、2人の子供が2つの個室を必要とする期間を考えてみるべきである。おそらく10年に満たない期間の筈である。

30代で家を持つという幸運な状況を考えて見ても、80代まで生きるとして、今の選択は50年間の住いである。3LDKが必要となるのはそのうち僅か10年と考えれば、そこは可動間仕切り壁や、2段ベット等の立体的な仕切りの工夫で乗り切って、その前後の40年間を主体とした家づくりを考えるべきであろう。

新婚の時代、そして子供が出て行ったあとのいわゆるエンプティネストの時代、そしてやがて来るであろう一人暮らしの時代、この合計40年間にもなるこの3つの時代を乗り切るための空間は公室と私室という2つのゾーンにわけて考えると分かりやすい。

既存の3LDKプランでは南面(主開口面)側に2室が配置されていることが多い。ここにLDKと主寝室が並んでいて、その間の仕切りはオープンにもなる、という設えが実に多い。

この公室・私室2ゾーンの考え方によると、南面(主開口面)は公室として、ひとまとまりになっている方が断然、都合が良い。親子4人の別就寝が必要な10年間だけ、例外的にこの公室ゾーンが寝室としても使われるというように考えるべきなのである。
今公室と呼んでいるのは、いわゆるLDK空間のことであるが、一時的(10年間)に主寝室空間を取り込むことはあっても、本来は一つの大空間としてのまとまりがあるべきである。ここが我が家だ!という大切にしたい空間である。

公室には、食事スペースとして5~6人まで一緒に会食できる程度の広さを確保し、くつろぎの場も同程度の広さが欲しい。生涯の長さで考えると、この空間を夫婦二人で過ごす時間が圧倒的に長いわけであるが、二人用の空間として考えるのではなく、3~4人程度の来客の備えを持っていることは、何かにつけて便利である。

一方、私室ゾーンは、既存の3LDKプランでは北(多くは廊下)側に2室が配置されていることが多く、大概その中央が廊下になっている。

私室ゾーンのあるべき基本構成としては、一つを夫婦寝室、他の一つを+αルームとして多目的に使うと考えたい。αは寝室にも使えるが、その他なんにでも転用できるという設定である。この私室ゾーンの構成がフレキシブルであることが大変重要である。

子育て最盛期には4人が何とか寝る場所を確保したいところである。
エンプティネストの時代は、寝室が大きくゆったりしていたい。
老齢化に連れて夫婦別就寝の要求も出てくるかもしれない。
夫婦の何れかが自宅で起業したいと思い立つかもしれない。

既存の3LDKプランでは、上記の何れをも満足するプランニングは難しい。玄関の位置はどうしても変えられないので、水回りの位置も含めて動かしたくなる。

フルスケルトンリフォーム(第1回で書いたので参照してほしい)を行えば、私室ゾーンを少し拡大し、水回りも少し拡大し、かつての1LDK部分、つまり公室を少し圧迫したプランニングが可能になる。

不幸なシナリオを考えなければならないこともある。夫婦どちらかが先に逝ってしまったあと、寝室は公室側に移動して、私室側を誰かに貸す、介護者に同居してもらう、といった展開だって考えておくべきだ。

残念ながら、私室側を膨らまし、公室側を少し圧迫したプランニングは既成の3LDKプランの中には見ることができない。ディベロッパーの意識改革が無ければ、これはすなわち購買層の意識改革なのだが、このような当たり前の住要求を満たそうと思うならば、リフォームしか手は無い。3LDKの規模は欲しいが、プランニングは変えたい。

英語でリフォームというと、変革とか改革という意味につかわれる言葉なので、住宅改修にはリモデルとか、リノベーションという言葉を使うべきという識者もいる。
しかし、今まさに、新築型の画一プランを改革して、真に住まい手のニーズに密着したプランが求められている時なので、まさしく住まいのリフォーム(改革)が必要だというべきなのである。