新築の不自由さ? リフォームの自在さ?

新築マンションのモデルルームをいくつかハシゴをしてみると、良く似ていることに驚く。間取りも、材質も、カラーリングも、住設機器も何もかもそっくりである。販売競争を重ね、切磋琢磨した結果、似たところに落ち着いてしまうようである。ユーザーの立場からすると、市場が過熱していれば、選択に迷うほどの豊かな品ぞろえが生まれると期待するが、何故かひたすら画一化の方向に向かう不思議が新築マンションにはある。

それは量産というところに秘密がある。ある本によるとマンションの1棟当たりの平均住戸数は約50戸だそうだが、業界をリードしている大手デイベロッパーの物件は1棟あたり数100戸にも上る。これだけの戸数をまとめていっぺんに作り、いっぺんに売る。僅かの売れ残りも許されない厳しい業界のため、皆が手堅い安全路線を走っているというわけである。

「良い品を安く」は商売の理想であるが「安かろう悪かろう」という言葉があるように良い品は普通、高い。キッチンにしてもバスユニットにしてもメーカーのカタログを見ると、性能と価格はきっちり正比例していて「普及品」から「高級品」に至る序列感が見事に演出されていて、買い手は目移りしているうちに高い価格の商品に誘導されるように仕組まれている。

建具や造付け家具についても同様である。メーカーは面材や金物に工夫を凝らし、グレード感を作り出している。貼りものだとすぐ見破られるような面材は安く、本物の木と見まがうものは高く値付けされている。金物であれば機能そのまんまのステンレス製ば安く、彫刻的な形のクローム製か真鍮製であれば高く序列化されている。

メーカーが必死の努力で作り上げた「良い品は高い」というユーザー向けの価格体系を新築マンションの作り手たちはものの見事に打ちこわし、「高い商品」を超安価で手に入れるマジックを行使してしまう。つまり「大量に発注する」ことでこのマジックか可能になる。「高く見える商品」だけを並べれば必ず売れるという神話が生まれ「高く見える商品」一色のインテリアが生まれる。これが画一化の秘密である。

新築マンションの世界は、商品が1種類しかないようなものだから、極めて不自由な世界である。買い手にとって不自由なだけでなく、この世界で働く設計者にとっても、とんでもなく不自由である。設計者が住まい手にとって良かれと思って加えた創意工夫は、販売上リスキーであるとして退けられてしまうことになりかねない。

人間は多様である。一人として同じ人はいない。そしてみんなが、いい味出して生きている。日常生活の些細なところにも拘りや流儀が忍び込んでいて、立ち居振る舞いにその人らしさが醸し出されている。服装、小物、そしてその人が使う道具達。この延長上にそれぞれの人の住まいを考えるというのが「注文住宅」の世界である。

マンションの世界で、この自在さが発揮できるのはもう、リフォームの世界だけかもしれない。