表皮1枚に表れてしまうリフォームの評価

「リフォームで一番重要なことはインフラです、つまり目に見えないところでしっかり家の価値を支えてくれているのは設備配管や内装下地なのでここに重点的に目を配ります。」という思想は絶対に正しいと思う。リフォームが終わった後でインフラに具合の悪いことがわかったら、また全部やり直さなければいけない。せっかくお金をかけてこれでは元も子もない。

今日お話ししたいのは、このこととは全く逆の話で、折角、お金をかけてインフラを周到に整備しても、見た目一皮、表面一枚の出来が悪ければ、すべての努力が水の泡というほどのマイナス評価を受けてしまうということである。このことは、設計者のみならず施工者の方々が最も気を使っているところで、キズ、ムラ、シワ、ヨゴレ、ワレ、シミ、ヘコミ、ズレ、目チガイ、ユガミ等、どの一つをとっても疎かにできない一大事に発展してしまう。このことを、日本人特有の病的な潔癖症のなせる業で、外国では全く見られない現象だ、などと平気な人も居ないわけではないが、精魂込めて作ったものを施主に引き渡す時に、シミひとつない状態にしておきたいと思うのは、職人的なプライドのなせる業で、料理人や洋服の仕立て屋の世界も同じであろう。つまりベストコンデイションで引き渡す、そのあとお客がどのような食べ方をしようが、どうように着こなすかは別の問題なのである。お客の立場も全く同じで、買う瞬間、引き渡しを受ける瞬間は、最初っからキズは嫌だよ、と構えて当然だと思う。いい仕事をしました、と、いい仕事を買いましたはイーブンな関係なのである。

本当にいい仕事と、本当はいい仕事ではないのだけれど、表面ツラだけを取り繕っている見せかけ仕事とを見分けることは中々難しい問題なのである。いい仕事も見せかけ仕事も表面ツラは同じように見える。素人だから見分けがつかないのではなくその道のプロでも分からない。プロが活躍できるのは、原因を探るために表面をはがしたり、穴をあけたりして中を覗くことを許された場合だけである。

そこで重要となるのは施主と施工者との間に信頼関係が築けているかどうかの1点に尽きる。過去の仕事を見せてもらう、進行中の現場を見せてもらう、設計打ち合わせの中で仕事への取り組み姿勢を感じる、等の経験を一緒に積み上げてもらうことが信頼関係の構築に大いに役に立つ。

いい仕事をしたい、ということではなく、手直しをし易い仕事、の方向にどんどんと施工者の選択が流れて行ってしまうことに私は危惧を感じている。手直しをしやすいということは、実は作りやすいということで、丹精を込めた、いい仕事、手の込んだ、いい仕事とは正反対の方向の仕事なのである。

リフォームの現場で「左官仕事」をなかなか見なくなって来ている。木舞を組んで土壁を塗って仕上げる本物の京壁などは望むべくもないが、ラスボードの上に左官塗りという仕様もとうに死に絶えて,「左官仕事」と言えばプラスターボードの上に2~3㎜の仕上げ材を塗る仕事を指すわけであるが、その「左官仕事」すら見かけることが少ない。一般的には京壁風、珪藻土風の樹脂系クロスを貼って済ます例が殆どのようだ。その左官工事が施工者に何故嫌われるかというとムラとヒビ割れである。結局は施主のクレームが怖くて二の足を踏むわけである。日本一の名人という左官屋さんの仕事を見たことがあるが、よく見ると大面積になるとムラは出ている、冷暖房を焚けばヒビも入ってくる。だから悪い仕事かというと、ムラやヒビがあっても見事な仕事であることは間違いない。ほれぼれする味がある。

左官はヒビが入るものムラもでるものと承知して左官仕事の味を味わえる施主が最も得をするということになる。施工者の方でも、このお施主さんなら解ってもらえるという信頼感が無いとなかなか左官仕事を勧められない。

実は左官仕事が嫌われるのと同じくらい、プラスターボード上ペンキという仕上げも嫌われている。下地の不具合を中々隠すことができなくて、良心的な施工者であればあるほど何度もペンキを重ね塗りをして、結局は足を出してしまうようである。樹脂系クロスであればごまかしが効くということなのだ。本当の選択はごまかしをすることではなく、下地にしっかりお金をかけて作るべきなのだ。

何処にお金が掛かったかをしっかり説明して良い仕事を引き渡す、施主の方も、仕事の表面ツラを見るのでなく、良い仕事の中身を吟味してその対価を払う、こういう関係を築くことができれば、いい仕事中心にリフォームが回っていくに違いない。