リフォーム性能の見極め方(その3)—-断熱と省エネ

 3.11以降、省エネに対する意識がガラッと変わってしまった。限られた資源を大切に!とか、地球環境を大切に!とか、いう標語が如何にそれまで漫然と響いていたのかが解る。今、自分が節電努力を怠れば東京大停電がすぐにでも起こるかもしれない、という切羽詰まった状況がかなり続き、宇宙船地球号の心配などよりも、自分の住んでいる地区の計画停電がいつ起きるかと脅かされて暮らしたものである。

その後の人々の再生可能エネルギーへの高い関心や脱原発に向けた取り組みを見るにつけ、この意識変化が一過性のものに終わらず、我々の浪費的な生活文化のありかたそのものを見直す大転換に繋がってほしいと強く願う。

駅のコンコースなどで、照明器具などを間引きして点灯していたのが、もうそろそろいいだろうと以前の明るさに戻っているのを見ると、やれやれ、ちっとも変らないのかとがっかりする。省エネは行き過ぎると不快であるし、不便でもある。身体機能が低下している人にとっては不安ですらある。省エネと不快・不便・不安をどう折り合いを付けるかがこれからの課題だろう。もういいだろうで元に戻ってはいけない。

さてリフォームする人は省エネとどう向き合えばよいのだろう。

これは私の持論だが、リフォームする人は、そのリフォームを決意したとたん、今後60年間の30%の省エネ努力を先取りしたことになる。ちょっと説明を要するが、まずマンション1戸を新築すると60t(トン)のCO2が排出される。一方1戸の家で発生する光熱費相当のCO2発生量は3.3t(トン)でこれを30%削減すると年間1t(トン)のCO2削減になる。一方リフォームによって発生するCO2量は新築の数十分の一と言われているので、仮にこれをゼロと置くと、新築マンションを購入するのを止めて中古マンションをリフォームすることに決意した人は、60t(トン)つまり年間1t(トン)の節約を60年間続けたことになる、という訳である。

新築を止めてリフォームを推進することでいかに大量のCO2削減に寄与できるかは驚くほどである。日本は新築市場が大きすぎて中古市場が育たないとよく言われているが、CO2削減の国際公約を守るためにも、もっともっと中古流通が促進されなければいけない。

リフォーム住宅に住む人は省エネ努力をしなくてもよいということではない。住んでからも省エネ努力を続ければ光熱費が減少し、何よりも家計が助かる。

やせ我慢の省エネではなく、不快・不便・不安につながらない省エネはどうやったら実現できるのだろう。省エネに関わることの範囲は大変広い。今回はまず断熱について書いてみたい。

鉄筋コンクリートのマンションでは外壁面の室内側にプラスターボードの内貼りがなされているのが普通である。これが無いと壁面に結露し、やがて黒カビが発生して大変みっともないことになる。建物の北面や妻面では、プラスターボードの内貼りがあっても結露や黒カビが発生しがちでその防止のためにコンクリート面とプラスターボードの間に断熱材を入れる。60年代70年代のマンションはこれができていないので問題が起きている。戸境壁側の壁面は、最近の優良マンションでもコンクリート面に直にビニルクロス貼りとしてプラスターボードの内貼りがない場合がほとんどである。

このように、一般にマンションの断熱は不完全で、省エネとは程遠い状態にあるといって良い。戸境壁側の断熱が全く考慮されていないのは、冬は隣戸も暖房をしているはずだという怪しげな仮定に基づいているためで、最近の少子高齢化の傾向、家余り現象、生活時間の多様化を考えれば、隣戸の部屋が長期間、暖房をしない確率は結構高いのではないかと思われる。上下の住戸についても同様で、最上階の天井、最下階の床だけは断熱をするが中間階は断熱を省く、という設計がまかり通っているが、これなども見直さなければおかしい。

そこで最近「断熱リフォーム」という考え方が出てきて、ようやくマンションにも正しい断熱工法が普及する兆しが見えてきた。「六面断熱」という考え方で、住戸単位ごとに断熱材で六面(床+壁4面+天井)を包むことを原則としているため、隣戸や上下階が売りに出されようが長期不在であろうがビクともしないという考え方である。

断熱で見落とされがちなのは、内部結露である。プラスターボードの表面には結露がなくても隠れたコンクリート面に結露が発生する事故は大変多く、気が付きにくいところだけに重症となるケースもある。

燃焼器具から発生した、暖かく湿った空気が断熱材の背面に回って、冷えたコンクリート面で結露してそこにカビを発生させるのである。これを内部結露と呼んでいるが、これを防ぐには断熱材の部屋内側の表面に湿気を通さない膜を設ける必要がある。断熱と防湿の両方が満たされなければ完全とは言えない。しからば、どのような種類の断熱材を何ミリの厚さで設置したらよいか?それはコストとの相談となる。初期投資を十分に行えば、光熱費は安くなる。初期投資を減らせば、光熱費が上がる。これはあなたの資金計画次第ということになる。